(2020/7/4)

日本の会計ソフトの英語化は可能なのか?

日本の会計ソフトは基本的に全て日本語でしか使用できません。日本の中小企業・個人事業主の間で最も使用されていると言われているのは弥生会計らしいですが、もちろん(?)英語対応はしていません。また、最近人気のクラウド会計ソフトのFreeeやMF Cloudも日本語のみ対応しています。これらの会計ソフトは(私が知る限りでは)英語対応をする予定もありません。そうなると、英語で会計ソフトを使用したい人はどうすればいいのでしょうか。海外の会社ももちろん会計ソフトを作っていますので、それを使用するという手もあるでしょう。日本の会社が海外製の会計ソフトを使って問題ないのか、という疑問を持つ人がいるかもしれませんが、会計ソフトの機能などをしっかり確認すれば問題ないものもあります。海外製の会計ソフトに関してはこちらの記事を見てみてください。日本の税金等のルール上、必要な機能がない海外製の会計ソフトもあるので注意しましょう。「完全に英語に対応した会計ソフトがいい」という人は海外製でもいいのですが、日本の税金のルール等は(もちろん)考慮されていませんので、そういう部分を考えながら使用するのはストレスにもなるでしょう。多くの場合、問題になるのは会計のルールではなく税金のルールの方だと思います。会計のルールというのは、「ある程度」は世界共通なので大きな違いはないのですが、税金のルールは国によって大きく異なります。会計ソフトでいうと、消費税の影響が一番大きいでしょう。消費税はすべての取引(売上、経費その他)に対して何らかの消費税の情報を追加する必要があるためです(一部、必要のない会社もあります)。日本の会計ソフトを使用している限りは、この部分に関しては機能面での心配はいりません(会計ソフトが勝手に消費税のことを全て完璧にやってくれるというわけではありませんので気をつけてください)。他にも法定調書(会社が毎年提出しないといけない書類の一つです)や固定資産の管理、消費税の確定申告書作成、など日本の会計ソフトは日本の法律上必要な作業が出来るようになっているものも多いので、やはり日本の会計ソフトを使用するメリットは大きいです。海外製の会計ソフトは、基本的には日本語を理解するのが難しい人が使うのが最も良いと思っています。日本語がわからない場合は、先ほど述べた法定調書等を自社で作成出来ることにそれほど価値がないと考えるからです。その場合は外部の税理士などの専門家に書類作成を依頼するのが一般的です。さて、日本の会計ソフトを使用する場合にはそれを英語化することは可能なのでしょうか?結論としては一部可能です。

どのように会計ソフトを英語化したらいいのか?

ではどのように英語化するのかというと、主に「勘定科目」の部分を修正します。勘定科目とは、「売上」や「会議費」「通信費」などの取引の記録をする際に使用する名前のことです。これは、ほとんどの会計ソフトでカスタマイズが可能です。自分で新しく勘定科目を作成することも出来ます(好きな名前を勝手に設定しても問題ありません)。なので、勘定科目を英語名にすることで英語化出来ます。「売上」の場合は「売上/Sales」や「Sales」にします。「会議費」は「会議費/Meeting」や「Meeting」といった具合です。個人的には「売上/Sales」のように日本語と英語を併記するのがいいと思っていますが、会計ソフトの仕様で勘定科目の文字数制限があったりすると難しいことも多いです。その場合、「売掛金/Accounts Receivable」を「売掛金/AR」にするなどして工夫すれば問題ないこともありますが、少し煩雑にはなります。省略するのがわかりにくいと感じる場合は英語表記のみで作成する方がいいかもしれません。

もう一つ英語対応する部分があります。「摘要」です。摘要とは説明欄のことで、取引先の名前や取引の詳細を入力する際に使用します。例えば無印良品でペンを買ったとすると、「無印良品 ペン」などと入力しますが、英語で「Mujirushi pen」などと英語にするだけです。英語で摘要に入力していいのかと疑問を持つ人がいるかもしれませんが、日本語でないといけないというルールはありませんので、特に問題ないでしょう。

「勘定科目」と「摘要」の英語化が出来ると、月次決算の英語化がある程度出来るようになったと言えるでしょう。月次決算とは、月ごとに作成した決算書のようなものです。月次決算は、ある月の月末時点での売上や利益、資金の残高等を確認するために行う作業です。その場合、試算表と言われる書類を出力すると良いです。試算表は勘定科目ごとの金額を集計した表のようなもので、上記で設定した英語化した勘定科目名が通常そのまま記載されていますので、勘定科目を英語化することで、同時に試算表も英語化することができます。

ここまで出来れば、基本的には英語化の作業は完了したと言えると思います。というのも、他の作業を英語化するのは難しい場合が多いためです。具体的には決算書の作成です。月次決算ではなく、一年に一度の決算です。会計ソフトによって多少異なりますので詳細は省きますが、決算書を英語で作成するというのは勘定科目を英語化する作業とは別の作業が必要になりますが、(おそらく)決算書のすべての項目について英語表記(または日英併記)することは出来ないと思います。理由は、単純に表示する決算書の文字(勘定科目や「資産合計」などの集計した欄)がカスタマイズ可能な部分とそうでない部分があるからです。一部の項目についてだけ英語表記になっている決算書を会社の正式な書類とするのはさすがに適切ではないと思います。ですので、年間の決算をこの方法で英語化するのはおすすめできません。なお、同じような問題は月次決算の試算表にも生じますが、試算表が会社内部の書類である限りは問題ありません。

会計ソフト自体を英語化する以外の方法は?

上記で紹介した方法では都合が悪いという会社もあると思います。例えば外資系企業の場合には、海外の親会社に月次レポートということでデータを送る必要がある場合には、親会社が決めたフォーマットでデータを作成することが多くなるでしょう。その場合には、日本の会計ソフトから出力した書類をそのまま海外に送るというのは出来ないのではないかと思います。フォーマットが決まっている場合にはそれに従うしかないですが、日本法人の方である程度決めることができる場合には、エクセルで作成することをお勧めします。

エクセルで英語化する場合には、「勘定科目」の英語化は行わずに「摘要」だけ英語で入力していれば十分でしょう。条件としては会計ソフトの機能として試算表(できれば決算書も)、総勘定元帳、仕訳帳の出力(エクスポート)が出来ることが望ましいです。正直なところ、それらをエクセルに出力出来れば、あとはそのデータを英語にするだけですので、もはや会計ソフトの話ではなくなります。具体的な方法はいくらでもありますので全ては説明しませんが、やはり関数を使うのがシンプルでお勧めです。私はVLOOKUPをよく使用します。例えば次のように関数を入れます。

水色のセルが会計ソフトから出力した日本語の勘定科目と数字(画像の30,000,000)とします。まず、緑色のセルにあるように、A列の勘定科目名とその英訳をそれぞれH列とI列に入力します。次に、B列に英語訳を入れる関数を入れます。B2のセルには「=VLOOKUP(A2,H:I,2,FALSE)」と入っています。これは、A2の「売上高」をH列とI列から探して、見つかったら、I列にある英訳を(B列に)入れる、という意味の関数です。便宜上、全てを同じエクセルシートに入れていますが、H列とI列を別シートで作成するのもいいと思います。なお、これはあくまで勘定科目のみを英訳する方法ですので、その他の項目に関しても応用が効きます。例えば、仕訳帳や総勘定元帳をエクセルに出力する場合には、取引毎の消費税の情報も一緒に出力が可能です。その場合、「課税仕入10%」や「輸出免税」などの消費税の情報も同じ方法で英訳することができます(そこまで詳細な情報が必要なのかというのはありますが…)。なお、Google Spreadsheetのようなクラウドでの使用を前提としたものであれば、日本の会計ソフトを使いながらも英語のクラウド会計ソフトと同じような情報が得られます。

まとめ

いくつかハードルはありますが、日本の会計ソフトを英語化して使用することは可能です。会計ソフトのどの部分が英語になっている必要があるのかによって、会計ソフト自体を(一部)英語化するのか、もしくは、エクセルに出力したデータを英語化するのかを判断する必要があります。英語に対応した会計ソフトを使用する方法もありますが、日本の会計ソフトを使用するメリットもやはり大きいです。参考になりましたら幸いです。