無料で使える英語対応のクラウド会計ソフトのレビューをしました
(2021/3/12更新)
クラウド会計ソフトとは
FreeeやMoney Forwardクラウドという名前は会社の経理業務等について考えたことのある人なら一度は聞いたことがあると思います。
これらはクラウド会計ソフトと言われるものの代表で最近急速に普及しています。
会計に限らず、会社を経営する上で必要な管理業務のほとんどを(時に自動的に)行ってくれる為、使いこなせれば非常に便利なサービスです。
また、クラウドサービスなのでどのパソコン・スマホからでもアクセス可能です。これは過去の会計ソフトにはなかった画期的なものと言えるでしょう。
(クラウドサービスはyahooメールやgmailを使っている人はその便利さがわかると思います)
waveとは?
FreeeやMoney Forwardクラウドは期間限定の無料トライアルはあるようですが基本的には有料プランしかなく、会社の場合は最低でも年間2〜3万円程度かかります。
年間2〜3万円程度のコストが全く気にならないという場合にはいいんですが、少しでもコストを削減したいという場合にはためらってしまう人もいるのではないかと思います。
そんなことを考えていてふと思いました。
「便利な機能はそこまでいらないから無料で複式簿記の仕訳ができるクラウド会計ソフトはないのかなぁ」
そして探しました。実際ありました。クラウド円簿というサービスです。
広告収入で運営しているので無料でできるようです。使ってみたところ会社の会計ソフトとして必要な機能はあるようですので十分使えると思います。
でも今回紹介したいのはクラウド円簿ではありません。
こちらがwaveです。
waveという会計ソフトを知っている日本の会計事務所はほとんどないと思います。実際私も最近まで知りませんでした。
waveとはカナダの会社が運営しているクラウド会計サービスです。なんと無料です。会計の業務に関しては完全に無料です。
有料なのは売上をクレジットカードで決済をする場合のようです。よって、これを使わなければ無料です。
日本の会社で海外の会計ソフトを使用できるのか?という疑問があるかもしれませんが、必要な機能が備わっていればもちろん使えます。実際外資系の日本の会社は海外製の会計ソフト(ERP)を導入しています。
無料で使えるけどセキュリティ面などは大丈夫なのか?という疑問もあるかもしれません。そこでwaveという会社について少し調べてみました(はっきりとわからない情報もありましたので、下記の情報は正しくない部分がある可能性もあります)。
サービス開始年:2010年
会社の所在地:カナダのトロント
従業員数:250名以上
年間売上:約20,000,000ドル(約21億円)
ユーザー数:300万
これらの情報でもってサービスが安全であるとかリスクがあるとかは判断できないと思います。参考程度の基本情報です。
最近Facebookの情報流出のニュースを良く聞きますが、どんなに大手の会社であってもなんらかのリスクはあると考えるのが普通だと思います。
その意味ではwaveが特別危ないということはないでしょう。どうしても不安な人はクラウドサービス自体のリスクを考える必要があるでしょう。
なぜ海外の会計ソフトが必要なのか?
なぜわざわざ海外の会計ソフトを使うのかというと、FreeeやMoney Forwardクラウドが英語に対応していないからです。私が知る限りでは対応する予定もありません (ブラウザの機能を使って英語化する方法はあります。他の日本の会計ソフトを英語化して使用したい場合はこちら)。
私のお客様は外資系企業や外国人社長(従業員)の会社が9割であり、もし会計ソフトを導入するとしたら英語で使えるものが望ましいのです。
また、設立して間もない会社も多いため、取引の数も少なく、FreeeやMoney Forwardクラウドのような様々なことを自動で処理するサービスには大きなメリットがない場合が多いのです。そのような場合は、複式簿記のルールで仕訳ができる無料のクラウド会計サービスというだけで大きなメリットがあります。
また、クラウド会計を導入して自計化(自分たちで経理業務を行うこと)をするのは会社のお金の流れ(財務の状態)を把握することにもつながるので企業経営の観点からもおすすめです。さらに、会計事務所とお客様が常にリアルタイムで会計の情報を共有できますので、経理業務の効率化もできるでしょう。
具体的には次のような場合には英語で使えるクラウド会計ソフトを使う価値があると思います。
・日本語がわからないが自分たちで日本の会社の経理業務をしたい(小さい会社で取引も多くないため)
・無料でクラウド会計ソフトを使いたい
・海外の親会社と会計データを共有したい
・会計事務所にデータ入力はお願いしたいが、リアルタイムでデータは確認したい
特に海外に親会社があり、日本にその子会社があるような場合には効率の良い月次レポートの作成が可能になると思います。多くの会計事務所はエクセルを使用した月次レポートを作成していると思いますが、クラウドで英語表示の会計データが共有できればエクセルのレポートが不要になる可能性もあるので検討の価値があります。
また、英語で会計ソフトを使用しないといけないというわけでもありませんので、単に無料でクラウド会計ソフトを使用したい場合にもwaveは活用できます(ちなみにですが当事務所はwaveと提携している等の利害関係は一切ありません。念の為…)。とてもシンプルなので一部を日本語表記にカスタマイズして使用できます。
他の海外のクラウド会計ソフトに関して
wave以外にも英語のクラウド会計ソフトはあります。有名なものだとQuickbooksやXeroがあります。ただし有料です。ある程度の規模の大きな会社で様々な機能があるものを使いたい場合はいいでしょう。
今回は「無料のクラウド会計ソフトで日本の会社・個人事業主にも使えるもの」という条件で様々なものを実際に試してみました。
具体的には①総勘定元帳と仕訳帳が出力できて、②何らかの方法で日本の消費税の取引の記録が可能な③複式簿記対応の④無料のものを探しました。
以下簡単にコメントします(2019年12月頃に確認)。
・Zipbooks (https://zipbooks.com)
無料だと総勘定元帳と仕訳帳が出力できない。
・Akaunting (https://akaunting.com)
複式簿記に対応していない。
・quickfile (https://www.quickfile.co.uk)
無料版は12ヶ月で仕訳数1000の制限あり(借方と貸方に入力すると2仕訳と判定されるようなので、実質500仕訳と思われる)。仕訳帳を一括して出力できない。
・Manager (https://www.manager.io/free-accounting-software/jp)
無料はデスクトップ版のみ。
・SlickPie (https://www.slickpie.com)
仕訳帳がエクセルやpdfで出力できない。
以上のようになりました。仕訳帳と総勘定元帳が出力できるかどうかが鍵になっていたように思います。厳密にはスクリーンショット等で対応できるものもありますが、現実的ではないので、これらの会計ソフトは基本的には使用できないものと判断しています。waveは私が確認した限りでは、これらの条件をクリアしています。
waveを実際に日本の会社に使用するために必要な設定など
wave (https://www.waveapps.com)はアカウントを作成すればすぐに使用できます。安心なのはクレジットカード情報等を一切入力しなくてもいいところです。ある日突然有料になったとしても大丈夫です。また、会社の重要情報等についても入力しなくていいので気が楽です。
(2020年12月にwaveに関する非常に重要な変更がありました。ページの最後に記載していますので、そちらを先に確認することをお勧めします。)
・勘定科目の設定
勘定科目はあらかじめいくつか設定されていますが、当然全て英語です。なので日本語も追加しておくと便利だと思います。会社で仕訳をするとしても最終的には会計事務所等とデータを共有し、決算書類を作成することになる可能性が高いためです(エクセル等を使用して自社で日本語の決算書を作成することももちろん可能です)。税務署にも決算書類を提出することになりますが、基本的には全て日本語で提出することになります。それらを考慮し、日本語も併記しておくのがいいでしょう。また、日本独自のルール(交際費の5000円ルールなど)についても科目を追加しておくと便利です。なお、補助科目機能はないようですので、全てを主科目で対応することになります。
実際に見てみます。
左のメニューにあるChart of Accountsをクリックします。
下記は勘定科目の設定例です。英語/日本語、という方法で併記しています。そのあたりは自由にカスタマイズ可能です。
税抜経理をする場合には、仮払消費税と仮受消費税も追加します。
・仕訳の方法
仕訳の方法で日本向けに何らかの対応が必要なのは消費税の扱いだと思います。結論から言うと、消費税に関してはDescription(摘要)に直接入力する方法が一番シンプルでいいのではないかと思います。他の方法としては「Sales taxes」というwaveの機能を使用することも考えられますが、様々なことを検討した結果、使用するのは難しいという結論になりました(詳細としては、一定の方法で仕訳をした時にしかSales taxesを使用することができないのが理由です)。また、税込経理か税抜経理かという部分については、どちらでも対応が可能です。ただし、日本の一般的な会計ソフトと異なり、税抜経理の場合には仮払消費税や仮受消費税を手動で入力することになります。
Description(摘要)に一定のルールの下、消費税の情報を入れることになりますが、例えば次のようなコードを独自のコードとして入れることになります。wave上でコードを登録するなどはできず、毎回手動でコードを入力します。
コード例
「JCT10%S」→10%課税売上(SはSales)
「JCT10%P」→10%課税仕入(PはPurchase)
「JCT8%PK」→軽減税率8%課税仕入(PはPurchase、Kは軽減税率)
といった具合に覚えやすいルールでコードを決めます。消費税が対象外の勘定科目については何も入力しなくてもいいでしょう。
それで、実際の仕訳方法ですが、「Add journal transaction」から勘定科目ごとにDescription(摘要)を追加できるので、そこに入力します。また、勘定科目に入れる摘要は消費税のコード専用にしてしまった方がシンプルでいいと思います。ただ、売掛金などの消費税が関連しないような勘定科目の場合には、得意先名をいれるなどして補助科目のような使い方もできます。摘要として入れたい情報がある場合はNotesという欄に入れても代用できます(逆にNoteは仕訳1つにつき1つしかないので消費税の情報を入れるのは難しいです)。
また、仕訳全体のDescriptionとして#1などの仕訳番号に相当するものを入れておくと、レシートなどのエビデンスと照合しやすくなるのでおすすめです。
なお、仕訳は「Add journal transaction」以外からも入れられますが、様々なことを検討した結果、全ての仕訳を「Add journal transaction」から入れるのがおすすめです。よって、メニューにあるSalesやPurchasesは使用する必要はありません(請求書作成、送付等もできるので、使うことを検討する価値もありますが、日本向けの仕訳を正しく行うことを優先した結果、現時点ではおすすめしません…)。
メニューのTransactionsをクリックします。
Add journal transactionsから全ての仕訳を行います。
実際の仕訳画面です。借方(Debits)と貸方(Credits)が両方あり、複数行の仕訳も可能です。
仕訳例です。勘定科目ごとにDescription(摘要)を追加できます(Accounting Japan KKとJCT10%S)。
別の仕訳例です。
仕訳帳と総勘定元帳の出力方法
メニューのReportsの下記Account Transactions (General Ledger)から総勘定元帳を出力できます。なお、エクセルで開いた時に日本語が文字化けする可能性がありますが、テキストデータ等で開いた場合には正常に表示されました。また、Macのnumbersでは日本語も正しく表示されるようです。どうしてもうまくいかない場合には、例えば勘定科目の会議費をKaigihiにするなどして対処するのもありです。
Settingsの下記Export all transactions for Excel(CSV)から仕訳帳を出力できます(アカウント作成時のメールに送られます)。
その他
・ユーザーの招待は可能で、権限をどこまで与えるかを設定できるので、親会社や会計事務所を招待すると便利です。
・仕訳画面で「Mark as reviewed」というボタンがあるので、親会社や会計事務所が仕訳をチェックする場合は便利です。
・データのバックアップとして仕訳帳や総勘定元帳は最低一年に一度は出力して別の場所に保存しておくのがいいと思います。
・会計ソフトではありませんが、給与計算もクラウドでやりたいという場合はフリーウェイ給与計算があります。従業員5名までは無料です。さすがに英語対応はしてないですが…。
・実際にwaveを使用してみておすすめの使い方等がありましたらぜひ教えて下さい^-^
・日本の会計ソフトを英語化したい方はこちらの記事をご覧ください
・初期設定等についてお手伝いできることがありましたら当事務所までご連絡ください。
(2020年12月4日追記)
2020年11月末をもってアメリカとカナダ以外の国のユーザーは基本的にはwaveを使用することが出来なくなったようです…。
すでにアカウントを持っている場合にはこれまで通り使用出来るようですが、今後それも変更になる可能性はある思われます。
今後も使用される場合には、定期的にデータ出力をしてバックアップをするようにした方が良いでしょう。
参考
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