海外の法人(外国法人)の消費税還付について
(2023/10/3)
最近はオンライン取引なども普及し、グローバルに取引を行う会社も当たり前になってきたように思います。日本に存在する会社(株式会社や合同会社)が日本の消費税を払ったり還付を受けたりすることは自然なことです。インボイス制度も始まりましたのでそのような会社や個人事業はこれから増えていくことと思います。それでは、日本に存在しない海外の会社は日本の消費税には関係ないのでしょうか?これに関しては複雑なルールがいくつかあるのですが、場合によっては海外の会社も消費税を払ったり還付を受けたりすることがあります。どのような場合に日本の消費税が関係してくるのかを整理し、還付を受けることができる場合についても簡単に説明したいと思います。
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音楽やゲームなどのデジタルコンテンツの販売
海外の会社が日本の消費者に音楽やゲームなどのデジタルコンテンツを販売することは当然あると思います。通常、日本の国内で売上があった場合にはその会社は日本で消費税を納税する必要があります。では、会社が海外にしかない場合にはどうなるのでしょうか?デジタルコンテンツの売上は日本の売上なのか海外の売上なのかどちらになるのでしょうか?消費税のルール上は、日本に住んでいる人に音楽やゲームなどのデジタルコンテンツを販売した場合にはそれは日本の売上になります。よって、会社が海外にしかなくても日本で消費税の納税をする必要があります(日本の税務署に納税をするということです。ただし、色々な条件があり、消費税が免除される場合もあります。)。よって、このような事業をしている海外の会社は日本で消費税を納税しないといけなさそうです。もしも日本で何か消費税を払うような経費(費用)がある場合には別ですが、基本的には還付というのはあまりないかと思います。
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インターネット広告などのサービスの提供
海外の会社がインターネット広告のサービスを提供することも普通にあると思います。場合によっては日本に子会社などが全くなくても提供は可能です。さっきのデジタルコンテンツを販売の例でいうと、この場合も海外の会社は日本で消費税を払わないといけなさそうですが、実はそうではありません。インターネット広告を実際に利用するのは(消費者ではなく)日本の会社などであることを理由として、消費税を払うのは海外の会社ではなく利用する日本の会社ということにしています(リバースチャージと言います)。よって、海外の会社は消費税を納税することはありません。ただ、先程と同様ですが、もしも日本で何か消費税を払うような経費(費用)がある場合には海外の会社が還付を受けるということもないわけではないです。
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日本の商品を購入して日本で販売
こういうことをしている海外の会社があるかどうかはわかりませんが、インターネット等を利用して日本で商品購入して日本でその商品を販売するということもないわけではないと思います。転売などのビジネスをしているとありえるのかもしれません。その場合には、日本で商品を販売しているということで、日本の会社と変わりないルールが当てはまります。ですので、基本的には消費税を納税することになると考えられます。
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日本の商品を購入して海外に輸出する場合
日本の商品を海外で販売したいと考えている海外の会社はあると思います。海外で商品を販売して、その販売について日本の消費税を支払う、というのはありません。その海外の税金のルールにより海外の消費税に相当するものを支払うことになると思います。では日本で購入する商品について、日本の消費税はどうなるのでしょうか。パターン別に確認していきます。
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日本の販売業者が輸出して販売する場合
日本のネットショップなどを利用してそのネットショップが海外発送をしている場合には、購入する海外の会社側の立場としては基本的には日本の消費税は支払っていないと思われます。輸出される商品というのは免税と言われ、消費税の納税は必要ありません(還付もありません)。よって、海外の会社に日本の消費税を請求することもないと考えられます。もし領収証などに消費税の記載があった場合には一度そのネットショップに聞いてみても良いと思います。
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日本の販売業者が国内の倉庫などに発送して、海外の会社がその倉庫から輸出代行業者等を利用して海外発送する場合
日本のネットショップは海外発送に対応していないこともあります。その場合には海外の会社が自分でなんとか輸出をしないといけなさそうです。日本には輸出の代行をしてくれる業者もあるので、その会社にお願いすることになると思われます。この場合は消費税はどのようになるのでしょうか。結論としては海外の会社は消費税の還付を受けられることになりそうです。日本の販売業者が輸出する場合と何か違うのかと思うかもしれませんが、理由を説明します。専門的な内容もあるのでわかりにくい部分があったらすみません。
理由1: 日本の販売業者(ネットショップ)は輸出をしていない
海外発送をしない販売業者は日本の倉庫に納品することになります。よって、当然輸出はしていません。普通の国内販売です。その場合は日本の消費税がかかっていることになります。海外の会社も消費税を払うことになります。日本の販売業者が輸出して販売する場合は免税になりますが、今回の場合には免税にはなりません。
理由2: 海外の会社は海外で販売する
海外の会社が自分で業者に依頼して輸出した商品は海外で販売することになります。一旦国外に輸出してから販売するのか日本の倉庫で販売したものとして輸出するのかによって多少扱いは異なりますが、どちらの場合でも日本の消費税はかからないことになるので、海外の会社が販売について納税しないといけない消費税はないことになります。
上記の2つの理由により、海外の会社が(販売により)納税しないといけない消費税はありませんが、(商品の仕入れにより)支払っている消費税はあります。この場合には消費税の還付を受けることができます(仕入税額控除と言います)。
なお、参考までに法律上の細かいルールについても記載しておきます。
「理由1」に記載した海外の会社も消費税を払うことになる、について
消費税法第30条に記載の「国内において行う課税仕入れ」を行った場合に仕入税額控除の適用があります。「国内において行う課税仕入れ」は日本国内で事業のために商品を購入した場合などが該当します。ただ、消費税法第7条の輸出免税等に該当する取引については該当しないことになります。海外発送をしない販売業者が日本の倉庫に納品する、というのはその輸出免税等には該当しないため、「国内において行う課税仕入れ」に該当する=消費税を払うことになる=仕入税額控除の適用がある、となります。
「理由2」に記載した海外の会社は海外で販売する、について
国外に輸出してから販売する、は通常消費税法第31条の「国外移送」に該当します(その輸出の証明がされる必要はあります)。「国外移送」は日本で商品を販売したことにはならないので日本の消費税はかかりません。また、仮に「国外移送」の要件に該当しない場合であっても海外で商品を販売するので、売上に対して日本の消費税はかかりません。「国外移送」の要件に該当せず、課税売上割合が0%になる場合、課税売上割合が95%未満であるとして、個別対応方式により仕入税額控除の計算をしますが、海外の商品販売のための国内の商品の仕入れは「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当するため、その仕入れ代金は結果として全額が控除の対象となります。
日本の倉庫で販売したものとして輸出することになる場合、還付のためには消費税法第7条の輸出免税等に該当する取引である必要があります。よって、輸出証明の条件を満たさなければなりません。そうでなければ売上について消費税がかかってしまうことになります。
なお、消費税法第4条により商品の販売が日本国内の取引かどうかの判定をします。資産を販売することになったときにその資産が国内にあった場合には国内取引に該当し、海外にあった場合には国内取引には該当しないことになります。よって、販売することになったものを輸出する場合には国内取引に該当し、輸出してから販売することになったものは国内取引に該当しない(国外取引である)、という整理になります。
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還付を受けることができる場合
取引の内容から判断して還付が可能と思われる場合であっても自動的に還付が受けられる状態にはなるわけではありません。課税事業者というものに該当する必要があります。どのような場合に課税事業者に該当するのかは様々な複雑なルールがありますが(売上が1000万円を超えるかどうか、など)、最も簡便なのは課税事業者選択届出書を提出することです。課税事業者になれるタイミングなどについて一定の制約はありますが、確実な方法の一つです。また、国内に事務所などがない海外の会社は納税管理人という手続きを代行する人を専任する必要があります。実際の還付は確定申告書類を提出することで受けられることになります(原則一年に一度)。
本稿は個人の見解であり内容を簡略化して説明している部分もありますので、実際の税務判断にあたっては必ず専門家にご相談ください。
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